第68章 新しい赤ちゃんができたからって、本当に私のこと要らなくなっちゃったんだ

長谷川栞は、まさかこんな場所で中野蓮に会うなんて思ってもいなかった。思わず言葉を失う。

「栞、見て。楽器みたいなペン、すっごく可愛い。赤ちゃん、喜ぶよね?」

「ねえ、赤ちゃん。白がいい? 黒がいい?……うーん、どっちもにしよっか」

菊地瑠奈は、中野蓮がすぐそばにいることに気づかない。仮に視界に入っても、今の彼を見て彼だと分かるはずもなかった。

彼女は白と黒、二本の笛型ペンを手に取り、長谷川栞の腹の前でひらひらと揺らす。まるで、まだ見ぬ赤ちゃんに意見を聞くみたいに。

けれど実際、栞の腹の中にいるのは、まだ二か月を少し過ぎたばかりの小さな命――胎児というより、まだ胚に近い。

中野蓮の...

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